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制服の王子様(オジサマ)抱き枕カバー
羽山 正太郎

――事の起こりは、正兄ちゃんからの電話だった。

『今日は早く帰れそうなんだ。待ち合わせて晩飯でも食いに行くか』

そう誘われて、わたしは交番にやってきたのだけど……。

「はー、疲れたー!」

当の本人は思いっきりため息をついた後、仮眠室のベッドにごろりと横になってしまった。

「正兄ちゃん、ご飯はー?」

「んー、ちょっと休んでからー」

「休んでから、って……」

羽山 正太郎

「お前も一緒に寝るか?」

「!」

「……なんてな、ははは。冗談だって!」

頭の後ろで手を組んで、正兄ちゃんはにししと笑う。まるで悪戯っ子の表情だ。

「もう……。そのまま寝たら、制服シワになるよ?」

「んー、わかってるー…」

正兄ちゃんはめんどくさそうに、寝たままもぞもぞと服を脱ぎだした。

「横着者……。あっ、ズボンまで脱がないでよ!」

「あん?いーだろ別に、見られて困るもんでもねぇし」

「見る方が困るの!!」

「はいはい。ったく、うるせぇなぁ……」

ぶつぶつ言いながら、正兄ちゃんはベルトに付けたケースを外す。

「あ……それ、もしかして手錠?」

「おう。なんだお前、見るの初めてか?」

「当たり前じゃない」

「はは、そうか。触っていいぞ。ほら」

正兄ちゃんがぽいと投げたそれを受け取る。ずっしりと重い。

黒いケースを開けると、にぶく輝く輪が露わになった。

「わー……。ねぇ、正兄ちゃん。これ、かけてみてもいい?」

「俺にかぁ?」

せっかく手錠を手にしたなら、刑事よろしく誰かを捕まえてみたい。

ダメ元でお願いすると、正兄ちゃんは苦笑した。

「……まあいいけど、菅原さんには内緒な」

「やった」

手錠を持って、正兄ちゃんの左手に寄せる。

強めに押し付けてみろと言われ、力を込める。ガシャン、と手錠が嵌まった。

「……おおー!感動!」

「はは、そんなモンか?」

ふっと笑うと、正兄ちゃんはわたしの目をじっと見つめた。

「…何?」

「いや、俺だけなのかと思って。お前はつけねぇのか?もう片方」

「へ?」

「犯人捕まえた時はな、逃げられないようにもう片方は自分で嵌めるんだよ」

「へぇ……そうなんだ、知らなかった……」

「なんだよ」

正兄ちゃんは呆れたように言ってから、くすりと笑った。

「じゃあ……お前は俺を捕まえて、どうする気だったんだ?」

いつもとは違う――大人っぽい顔。

「ど、どうする……って……」

何も考えてはいなかったと返すわたしに、正兄ちゃんはこう言った。

「お前にもかけてやろうか?手錠」

「えっ……」

「つながって離れられない……なんてのもアリかと思ってさ」

じゃらりと鎖を鳴らして、手を差し出す。

手の甲に触れた指はするりと動いて、わたしの指を絡め取った。

「!」

爪を撫で、第一関節、第二関節とゆっくり滑り落ち……付け根をくすぐる。

「っ、正兄ちゃん」

抗議のつもりで睨んでも、正兄ちゃんは余裕の笑みだ。

さっきまでふざけていたくせに、どこでスイッチが入ったのか。

「ば、晩ご飯は?そろそろ食べにいかないと、っ――」

「まだ用事が終わってない」

逃げようとした身体は、繋いだ手に止められる。

「せっかくお前に捕まったんだし、もう少し楽しみたいだろ?」

正兄ちゃんの目が、わたしを射抜く。

その微笑みはもう、子供みたいな無邪気なものではなくて――

わたしを翻弄する、男のひとのものだった。

「ほら――」

羽山 正太郎

「手、貸せよ。……一生大事にしてやるぜ?」

捕まったのは、いったいどっちの方だろう。